「労働災害の削減を目指す」。JFEスチールが取り組む、画像解析AIを用いた動作検知システム。

JFEスチール株式会社は世界トップクラスの技術を持つ鉄鋼メーカーです。

2021年度に発表した4カ年の第7次中期経営計画においてもGXとともに「DX」を戦略のに位置付けており、ものづくり企業の競争力の維持・向上にむけて、世代交代に対応した技能伝承や生産性向上などの取り組みに注力されています。

Lightblueでは「労働災害を削減する」ことを目指し、現場で働く従業員が基本行動を遵守できているか検知・評価を行う動作検知システムを画像解析AIの技術を用いて開発・提供しています。

システム導入に至った背景やプロジェクトの現状、今後のビジョンなどを、担当者である東日本製鉄所安全健康室係長 高岡様にお話をお伺いしました。

労働災害を減らす、画像解析AIを用いた「基本行動」評価

画像解析AIを用いた「労働災害の削減」のお取り組みがはじまった背景を教えてください

高岡さま:4年ほど前に遡るのですが、当時から現場で働く従業員が歩行、昇降、物の持ち運びなどの「基本行動」に起因する怪我をするケースが散見されていました。年間の労働災害件数の4割ほどがこの基本動作における怪我でした。

私たちとしてもハード面への対策は強化して取り組んでいたのですが、更に発生件数を減らしていくために角度を変えた取り組みも進めていくという中でソフト面での施策、例えば安全行動のリストが載ったカードを配布したり、注意を促すアナウンスを流すなどの施策を実行しました。こうした取組の結果もあり、基本行動における怪我の発生件数をやや減少させることができました。

しかし、カードの配布にしても注意を促すアナウンスにしても、時間が経過するにつれてそうした施策が従業員にとっては「当たり前」の環境となってしまうことから、現状のまま事故をさらに減らすことに限界を感じていました。そこで、なにか普段から注意喚起を促進する方法がないか模索をしていた、というのが背景になります。

画像解析AIを活用するに至ったのはどうしてなのでしょうか?

高岡さま:新たな施策として様々な方法を模索しました。例えば人が近づくと音が出るようなツールを試したこともあります。ただ人が近づいたら音が出るだけだと結局はBGMにしかならず、私たちが期待するような効果は得られませんでした。

そうしたなかでメディアを通じてLightblueの画像解析AI(Human Sensing)のソリューションを知ったことがきっかけになります。

そうしてJFEスチール様が実装した「基本行動」検知の仕組みについて教えてください。

高岡さま:画像解析AIを活用して、作業員が階段昇降の安全基本行動を遵守できているかをリアルタイムでチェックをするシステムを開発いただきました。ただチェックされるだけでなくルールを守れている場合は称賛の言葉をスピーカーから発報し、ルールを守れていない場合は警告を発報することで、作業員の意識改革を図るようにしています。

Lightblueの画像解析AIのソリューションを評価いただいたポイントはどういった点だったのでしょうか?

高岡さま:プロジェクトがはじまった2021年当時、動作解析に加えて骨格検知まで行える技術は目新しいもので、Lightbuleの先進性を高く評価しました。

また、精度と応答性が高いという点も評価していたところです。

事故に繋がりかねない動作を見逃す未検知は一番怖いですが、過検知も従業員のモチベーションを削ぐ可能性があり避けたいため、精度は重要な評価項目でした。

加えて画像を読み込んでから判定までのスピードが早いというのは今回のシステムの肝となる部分でした。階段を5秒以上かけて降りる人はいませんので、検知からのレスポンスの速さもLightblueの魅力でした。

従業員のモチベーションも保ち、安全行動遵守率が向上

画像解析AIを用いた「基本行動」検知システムの導入後の結果を教えてください。

高岡さま:具体的な数値は申し上げられませんが定量的な結果としても本システムを設置する前と後では安全行動の遵守率が改善されており、良い結果が得られています。

なにより、システムを導入するまでは基本行動ができているかどうか、人が見て定性的に評価をすることしかできなかったのですが、定量的に評価できるようになったことが大きな価値であると感じています。

導入後の気づきや従業員からのフィードバックなどはございましたか?

高岡さま:良かったポイントとして基本行動を遵守した従業員をリアルタイムのアナウンスで「褒める」ことが従業員のモチベーションに繋がったことがあります。

この手のシステムは、遵守できていないことをパトライトなどで注意するだけのものが多く、それだと従業員が常に監視されているような気になってしまいます。この度実装した画像解析AIを用いた「基本行動」評価システムは遵守した人を褒めるというスタンスなので、褒められることが普通になれば基本行動も習慣化されることに気がつきました。

実際に従業員からも「褒められる」ということで前向きに取り組めるという声も挙がっており、非常に重要な機能だったと思います。

これからのLightblueに期待すること、その展望を教えてください。

高岡さま:既に定量的な結果としては良い結果が出てきているので、まずはいま導入されている場所以外の、他事務所を含む現場への導入を増やしていきたいと考えています。どこにいても設置されている方が、より習慣化に繋がりやすいと思います。

機能としてもより活用していくうえで改善余地はまだまだあると感じているので、これをしっかりLightblueにフィードバックしながら、共創でより良い製品にしてしていきたいです。