2020年のi-Construction事例まとめ

i-Constructionとは

少子高齢化が進み、労働人口が減少していくこの日本では、人手不足に苦しまない業界はないといってよいでしょう。

特に、現場仕事がほとんどを占める建設業界ではその影響は深刻です。

どの業界でもこの問題に立ち向かうため、様々な工夫がなされています。

そんな中、DX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれる流れが話題となっています。

このDXとは、「デジタル技術をあらゆるものに適用することで変革を起こそう」という動きです。

話題となってきた背景にはAI・IoT技術の台頭と、人手不足による業務効率向上の必要性があると考えられています。

AIによる業務の自動化、ICT機器導入によるコミュニケーションのデジタル化、これらもDX導入事例といえるのです。

DXの流れの中でも建設業界に特化した動きにi-Constructionがあります。

このi-Constructionは、国交省が2015年から推し進めている取り組みで、ICT技術を全面的に採用したICT土工の導入を目的としています。

ただし、現在は、ICTだけでなくAIやIoT技術と組み合わせる事例も多数出てきています。

i-Constructionでできること

それでは、このi-Constructionではどのようなことができるのでしょうか。

建設の一連の流れに当てはめてみますと、

・ドローンやUAV(無人機)活用による測量と出来高測定の無人化

・設計、施工図面の電子化によるデータ管理の効率化

・電子データ検査による検査簡略化

・ICT建機による施工自動化

などが一例として挙げられます。

より具体的なメリットを挙げますと

・測量、設計工期の短縮

・現場作業員の削減

・作業員の安全性向上

を達成することができるでしょう。

このようにi-Constructionでは、少ない人数で安全かつ短工期を達成することに特化していると言えます。

i-Constructionの国内現況

i-Construction は国交相が推し進めているだけあって、全国各地で導入事例があります。

その多くが社員数の非常に少ない中小企業であり、大企業だけの特権ではありません。

特に中小企業に対しては、i-Constructionに関わる設備の導入に対して補助金精度や税制優遇措置が用意されており、その普及が手厚くサポートされています。

それでは、ここからは2020年に実際に導入されたi-Constructionの事例を

①現場作業の効率化

②電子化

③労災防止

の3つの観点で紹介していきます。

①現場作業の効率化

大規模な工事では、現場もそれに応じて広くなり、現況を確認するだけで途方もない時間がかかります。

更に測量となりますと、人の手で行うには更に膨大な人数と時間が必要となるでしょう。

i-Constructionの事例にはこのような問題を解決した事例が多数あります。

◎事例1:コマツのEveryday Droneによる現況把握

ポイント:

ドローンによる空撮で9haの施工範囲をたった20分で現況把握

キーワード:

ドローン、工期短縮、現況把握

事例詳細:

北海道の工事現場にて、コマツの提供するEveryday Droneというドローンを導入することで、工期短縮を達成した事例となっています。

この事例ではドローンが9haの施工範囲を空撮することで、たったの20分で現況を素早く把握できたとの効果が報告されています。

午前中にドローンを飛ばせば、人員を一切割くことなく、13時の打ち合わせまでに現況データをメンバー全員で共有できる、非常に効率的といえるでしょう。

このドローンの大きな特長は、単に空撮するだけでなく、空撮データから形状変化や土量を確認できる3次元データも生成することもできることです。

また、データの確認をタブレットで行うこともできるため、場所を選ばず誰とでもデータを確認できる点もDXならではといえるでしょう。

◎事例2:エアロセンスのエアロボマーカーによるドローン測量

ポイント:

ドローン測量に必要な対空標識設置時間を大幅短縮

キーワード:

測量、対空目標設定、作業時間削減

事例詳細:

i-Constructionを導入している高知県の建設会社が、ドローン測量に必要な対空標識設置作業の削減を狙って、最新の電子マーカーを導入した事例になります。

i-ConstructionではドローンやUAVを使った測量は一般的になりつつあります。

しかし、ドローンが正確に現場全体を測量するためには対空標識の設置が必要不可欠で、その設置位置を測量しなければならないという欠点があります。

その点、エアロセンスが開発したエアロボマーカーは、全球測位衛星システムと連動しているため、設置した瞬間に測量が完了してしまいます。

そのため、標識設置に要する作業時間が大幅に削減でき、この事例では約74パーセント減を達成できたと報告されています。

このように今までのi-Construction技術を改良する製品も続々と生み出されています。

②電子化の活用

建設現場では、従来紙の図面での管理が基本でしたが、時代は変わり3次元データで設計や現場を管理することができるようになっています。

電子化は、i-Constructionの中では一般的なことですが、ここでは電子化の新しいユニークな取り組みを紹介していきます。

◎事例3:静岡県が3次元データを管理するシステムを公開

ポイント:

静岡県内での工事にて納品された3次元データを蓄積し、一般公開することで県内工事の効率化に貢献

キーワード:

3次元データ、電子化、地方自治体

事例詳細:

この事例は県庁が独自に行っているi-Constructionの取り組みであり、建設会社が導入した事例ではありません。

しかしながら、県内の工事で納品された3次元データを蓄積していき、それを一般公開することで県内工事全体に貢献するというシステムは、まさに公共の利益を追求する行政のあるべき姿といえるでしょう。

この事例では誰でも登録された3次元データを閲覧することができるため、案件を受注していない業者でも測量不要で現場を把握することができます。

県内で工事することがあれば、誰でも測量不要のメリットを享受できるすばらしいシステムといえるでしょう。

◎事例④:クェスタの工事現場用デジタル看板

ポイント:

工事現場になくてはならい朝礼看板をデジタル化し、現場を楽しませる多機能追加

キーワード:

電子化、朝礼看板、近隣住民

事例詳細:

図面やデータの電子化は既にi-Constructionでは当たり前となっていますが、朝礼看板のデジタル化はどうでしょうか。

都内で建設中の日本一高いビルに導入されたこのデジタル朝礼看板はユニークな特長をいくつか持っています。

予定表の共有や図面の表示は当然として、何かと煙たがれがちな建設現場に近隣住民と交流する仕掛けが施されています。

タッチパネル操作で工事に関するマンガが表示されたり、工事現場に親しみを持ってもらえるようなコンテンツを用意するなど、ほかにはない面白い製品となっています。

効率化だけがi-Constructionではないということを教えてくれる事例です。

③労災防止

建設現場では常に労災のリスクと隣り合わせです。

特に重機による事故は人命に関わるため、どの現場でも細心の注意をもって労災防止に取り組まれていることでしょう。

i-Constructionではそもそも重機に人を近づけない工夫をすることで人身事故の未然防止を行っています。

◎事例⑤:コマツのICT重機で危険現場の作業員を削減

ポイント:

深さ13mの危険な掘削現場でオペレータ以外の作業員が不要に

キーワード:

労災防止、作業員削減、ICT重機

詳細事例:

北海道の砂防工事現場にて、ICT重機を導入し、最少の現場作業員で危険現場での工事を実施できた事例になります。

ICT重機とは、事前に登録した現場の3次元データなどを活用することで重機の操作を自動化し、熟練の技術が必要であった重機操作を不要とした重機です。

事前のデータ通りに重機が施工を行うため、周辺で確認したり測量する作業員が不要となることで、重機との接触事故をなくすことが可能です。

さらには設計通りの施工を行うため、施工時間も短縮され、オペレータ自身が危険な現場に滞在する時間も短くなることになります。

オペレータがリアルタイムに進捗状況をモニタリングでき、進捗を把握することができることもメリットといえるでしょう。

◎事例⑥:飛島建設が現場作業員の行動異常値を見える化する実証実験を開始

ポイント:

工事現場でありがちなヒューマンエラーをセンサーとAIで検出

キーワード:

労災防止、AI、ヒューマンエラー

詳細事例:

建設現場でもAIは活躍しています。

飛島建設はSassorとの共同開発で、作業員の異常行動をデータ解析し、ヒューマンエラーを未然防止するシステムを開発しました。

建設現場でのヒューマンエラーは人命に関わることもあります。

そうしたヒューマンエラーは、人間がふだんと異なる身体・精神状態のときに起こりがちです。

このシステムではそうした異常状態をAIが検出して、本人や監督者に知らせることができ、労災の未然防止に役立ってくれます。

仕組みとしては、まずヘルメットに取り付けられたセンサーが作業員の身体状態や動きをモニターし、そのデータを遠隔サーバーに転送します。

そうしてサーバに蓄積されたデータをもとに、作業員個人のふだんの状態をAIが見極め、その状態から外れると警告を発するという仕組みになっています。

このシステムは、2020年の9月から自社の工事現場で実証実験が開始されており、その結果が注目されています。

今後のi-Construction

2020年に導入・開発されたi-consructionの事例を見ていきますと、従来のDXを改良したもの、AIと組み合わせたものなど更に進化を続けていることがわかります。

また、地方自治体自らがDXを取り入れるなど、日本全体にi-Constructionが浸透しつつあることは間違いないでしょう。

今後、他業種でのDXの発達、AIやIoT技術の改良などが進めば、建設業界においても多種多様なi-Constructionソリューションが増え、導入する企業も増えていくと考えらます。

そうなれば、導入していない企業が競合に対して、工期・費用面で劣勢に立たされることも増えていきます。

裏を返せば、先に導入した企業が優位に立てる可能性もあるわけです。

DX化することが自社にとって武器になる時代がすぐそこに来ています。

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