2021年2月21日
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世界の建設業界における建設の遅延とコスト超過は、建設現場での労災事故が主な要因とされています。そして、建設現場での死亡事故率は、他の業界よりも5倍も高くなっています。海外では、AIを利用して建設現場でのリスクを事前に予測することで、労災事故の発生を低減させる取り組みが注目されています。
米国ボストンを拠点とする大手ゼネコンSuffolkは、同市のコンピュータビジョン会社SmartVidと協力して、AIによる建設現場の予測分析システムの開発に取り組んでいます。ドローンを使って撮影された建設現場の写真をコンピュータビジョンで解析し、AIでデータベースの事故記録を分析して、建設現場の労災事故のリスクを可視化しています。
Suffolkは、事故報告、写真、検査記録など、毎年数多くのデータを保存しています。これらの10年以上の期間に蓄積されたデータと、複数の外部ソースの情報を分析して独自のアルゴリズムを開発しています。
データの学習によって作成されたAIモデルは、建設プロセスや現場の危険度を可視化することで、事故の発生リスクを事前に予測して、現場管理者が労災事故を未然に防ぐための対策を実行できるようにします。
AIの予測精度を向上させるには、通常膨大な量の学習データが必要となります。Suffolkは、建設業界の多数の企業が、AIの学習のためのデータを提供できる機関として、2019年3月にPredictive Analytics Strategic Council(予測分析戦略協議会)を設立しました。米国の建設業界が団結して、建設現場の労災事故を防ぐという試みです。
参考:Artificial intelligence sees construction site accidents before they happen
米国の建設業界は、DX(デジタルトランスフォーメーション)が最も遅れていた分野でした。近年、作業員が現場で素早くツールを見つけるための画像認識ソフトウェアが導入されるなど、DXを推進する動きが活発化しています。IoTセンサーやカメラを利用して、AIとコンピュータービジョンで建設現場を可視化する試みもはじまっています。
AIとコンピュータービジョンを利用して、カメラ映像でリアルタイムに建設現場を監視することで、建設現場の進行状況が簡単に把握できます。現場管理者は、衝突の可能性などの潜在的なリスクを特定して、事故が発生する前にオペレーターに警告したり、機械自体を即時停止させることが可能になります。作業員が安全装備を着用していない、危険な機械の近くで作業しているなど、事故につながる可能性が高い状況をすぐに確認することができます。
IoTセンサーとカメラを利用して、大型トラックとすべての移動車両の位置を追跡し、運搬ルートと予測されるリスクをわかりやすく可視化することも可能です。現場作業員に、事前にトラックの到着を通知して準備させるなど、建設プロセスを効率化し生産性を高めることにもつながります。AIを利用して、機械のオペレーター業務をサポートすることで、重機の使用を大幅に簡素化できる可能性もあります。
Suffolkのプロジェクトは、AIとコンピュータビジョンによる建設現場の可視化、リスク予測、効率化の可能性を示しています。米国ではすでに、Suffolkを含む約20社の建設会社が、AIの利用を含む様々な建設現場のDX化を加速させています。
人材不足と低い生産性に悩む日本の建設業界にとっても、労災事故の防止は大変重要な課題です。AIとコンピュータビジョンで建設現場をDX化し、事故の少ない安全な労働環境を実現することは、建設業界に求められている働き方改革と言えます。
参考:AI in construction industry could help preventing accidents on a workplace
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