RAG Readyとは |これからの企業に求められるデータ第一主義

生成 AI の急速な発展の中、多くの企業が自社のデータベースと生成 AI を統合し、より現場に特化した活用法を模索しています。実際、生成 AI 関連の多くのセッションで生成 AI とデータベースを統合する RAG (Retrieval-Augmented Generation) に関する話題が登場し、ホットワードになっています。

一方で、RAG に関する成功事例が生まれていないことも確かです。精度が高く、現場活用につながる RAG システム構築のためには、データベースの構築方法から引用方法、データの質の問題まで幅広いノウハウが共有されておらず、成功体験も共有されづらくなっています。

そこで、Lightblue は生成 AI と社内のデータベースを連携させた状態、つまり RAG を導入・実装する準備が整っていることを「RAG Ready」と定義し、5 つの項目と 5 つのレベルに分けたロードマップを作成しました。

この記事では、「RAG Ready」に向けたロードマップを紹介しながら、現場で活用できる RAG Ready への具体的な準備手順とチェックポイントを解説していきます。

RAGとは何か?

RAG  は、データベースを参照する仕組みを取り入れることで、生成 AI が独自の出力を可能にさせる技術です。従来の LLM (大規模言語モデル) の限界を克服し、外部データを活用することで、より正確で信頼性の高い回答を生成します。

RAGの基本概念とLLMとの違い

RAGは、LLM に外部データを組み合わせることで、回答の精度と信頼性を向上させる仕組みです。LLM は膨大なデータを学習していますが、最新情報や専門知識が不足していることがあります。RAGは外部データをリアルタイムで参照し、最新かつ正確な情報提供を可能にします。

以下に、一般的なホワイトカラーの業務におけるRAGの具体的な活用例を挙げます。

  1. 営業部門での活用: 営業担当者が顧客との商談準備をする際、RAG システムを活用できます。 たとえば、顧客企業名を入力すると、システムは以下の情報を即座に収集・整理します。
    • 顧客企業の最新の財務情報や事業計画
    • 過去の商談履歴や購買パターン
    • 業界の最新トレンドや競合他社の動向
    • 自社製品の最新機能や価格情報 これにより、営業担当者は包括的な情報を短時間で把握し、より効果的な提案や交渉が可能になります。
  2. 人事部門での活用: 人事担当者が社内の労務管理や人材育成を行う際、RAGを活用できます。
    • 最新の労働法規や就業規則の変更をリアルタイムで反映し、コンプライアンスに関する質問に即答
    • 社員のスキルデータベースと最新の業界動向を照合し、最適な研修プログラムを提案
    • 採用活動において、応募者の経歴と社内の人材ニーズをマッチング これにより、人事業務の効率化と、より戦略的な人材マネジメントが可能になります。
  3. 企画部門での活用: 新規プロジェクトの立案や市場調査を行う際、RAGシステムが大いに役立ちます。
    • 最新の市場データ、消費者トレンド、テクノロジー動向を統合し、新製品アイデアの発想を支援
    • 過去の社内プロジェクト事例と最新の業界ベストプラクティスを組み合わせ、プロジェクト計画の立案をサポート
    • 競合他社の動向と自社のリソースを分析し、SWOT分析などの戦略立案ツールの作成を支援 これにより、より洞察に富んだ企画立案と意思決定が可能になります。
  4. 一般事務での活用: 日々の事務作業においても、RAGは大きな効果を発揮します:
    • 社内文書作成時に、最新の社内ガイドラインや業界用語を自動で参照・適用
    • 経費精算において、最新の経費規定と照合しながら、入力ミスや不適切な申請を自動でチェック
    • 社内外からの問い合わせに対し、最新の社内規定や製品情報を参照しながら、適切な回答を迅速に作成

RAG を導入することで、生成AIが最新かつ正確な情報に基づいた出力が可能になり、業務の質と効率が向上します。これは、単なる作業の自動化を超えて、従業員がより創造的で戦略的な業務に集中できる環境を作り出し、企業全体の生産性と競争力の向上につながります。

従来の大規模言語モデル(LLM)の限界

LLM には以下のような限界があります。

  • 最新情報の反映が困難
  • 専門分野での正確性の欠如
  • ハルシネーション(事実に基づかない情報の生成)のリスク
  • 企業固有の情報へのアクセス不可
  • 新規情報や変更へ再学習で対応する場合、多大なコストと時間を要する

LLM の限界を理解することで、より適切な AI 活用戦略の立案に繋げられます。

RAG がもたらす利点

RAGは、LLM の限界を克服し、以下のような利点をもたらします。

弊社の調査では、企業の生成 AI 活用アイデア 1,281 件中、一般的な ChatGPT などを活用して、プロンプトのみで対応できる業務は約 34% にとどまっていました。一方で、41% の業務では企業独自のデータ参照が必要であり、生成 AI の活用を伸ばしていくうえで RAG の活用が重要であることが見て取れます。

Veturi ら(2024) による研究では、RAG の導入により回答の精度が 10.15% 向上し、AI が誤情報を生成する「ハルシネーション」が 4.76% 減少したと報告されています。さらに、RAG は情報の更新が容易です。外部情報源を更新するだけで最新データを反映できるため、AI モデルの再学習に伴うコストと時間を大幅に削減できます。

RAG の導入により、企業は最新かつ独自のデータを活用し、より精度の高い意思決定と効率的な業務遂行を実現できます。

RAG Readyとは|企業に求められるデータ起点の改革

RAG Ready は、単なる生成 AI ツールの導入を超えた、企業のデータ活用能力が高まった状態を意味します。データの整備から検索システムの構築、LLMとの統合まで、包括的なRAG Readyを目指す取り組みが重要になっています。

RAG Ready の概要

RAG Ready とは、企業が RAG を効果的に導入し活用するための準備が整った状態を指します。これは単に生成 AI ツールを導入するだけでなく、社内のデータベースを効果的に活用できる状態を作り出すことを意味します。 RAG Ready になることで、業務に特化したアウトプットを生成し、業務効率の大幅な向上を実現できます。しかし、多くの企業では社内データの整備やインフラが不十分なため、RAG の本格的な導入に踏み出せないのが現状です。RAG Ready は、このような課題を解決し、生成 AI の潜在的な効果を最大限に引き出すための重要なステップとなります。

RAG Ready のレベルマップ

RAG Ready の達成度を評価するためのレベルマップを紹介します。「使用範囲」「技術的課題」「導入効果」「ベクトル DB」「検索システム」の 5つの観点から評価し、5 段階のレベルに分類しました。

RAG Readyにむけた5つのレベル

自社の現状を把握し、RAG導入に向けたロードマップ策定にお役立てください。

レベルマップで見る自社の現状

RAG Readyの発展段階を理解し、自社の現状を評価することは、AI 戦略の最適化に不可欠です。本節では、5 つのレベルの詳細と、自己評価の重要性について解説します。これにより、効果的なAI導入への道筋が明確になるでしょう。

レベルマップの解説

RAG Ready には 5 つの発展段階があり、企業の AI 活用レベルを示す指標となります。基礎導入から完全活用まで、段階的に進化することで、組織全体の AI 活用が深化していきます。これは、特定タスクの限定利用から始まり、最終的にはあらゆる業務プロセスに RAG が自然に組み込まれる状態を目指します。たとえば、基礎段階では単純な質問応答のみですが、完全活用段階では高度な意思決定支援が可能になります。

自社の RAG Ready レベルを把握することで、AI の導入状況を正確に理解し、次のステップへの明確な道筋を描くことができます。

自社の現状評価と次のステップ

RAG Ready の自己評価は、企業の AI 戦略を最適化する上で重要な出発点です。現状を客観的に分析し、次のレベルへの具体的なアクションプランを立てることで、効果的な AI 導入が可能になります。

この評価プロセスでは、単なる技術導入にとどまらず、組織全体の変革を視野に入れることが重要です。たとえば、自社をレベル 3 と評価した後、データ統合と AI 人材育成に集中投資することで、8 か月後にレベル 4 への移行を果たす、というシナリオも想定されます。

自社の RAG Ready 状況を正確に把握し、段階的な改善を進めることで、あなたの企業も AI の恩恵を享受できるでしょう。

RAG Ready に向けた 5 つのステップ

RAG Ready を実現するための、5 つの重要なステップを解説します。データの準備から運用コストの最適化まで、各ステップを理解し実践することで、効果的に RAG システムを構築・運用できます。

STEP1:目的と範囲の設定

RAG 導入の第一歩は、明確な目的設定と適切な範囲決定です。このステップでは、以下の 4 つの重要な要素に焦点を当てます。

  • 導入目的の明確化
  • 小規模タスクでの試験的導入
  • データの前処理とチャンク化
  • データの集中管理とクラウドストレージの活用

これらに取り組むことで、RAG導入の基盤を固め、効果的な展開への道筋を立てられます。各要素について詳しく見ていきましょう。

導入目的の明確化
まず、RAG 導入の目的を具体的に定義します。目的を明確にすることで、導入後の効果測定が容易になり、関係者の理解と協力も得やすくなります。たとえば、「カスタマーサポートの応答時間短縮」や「社内ナレッジの効率的な活用」などが考えられます。これにより、RAG 導入プロジェクトの方向性が定まり、効率的な推進が可能になります。

小規模タスクでの試験的導入
目的に基づいて、特定の小規模なタスクやプロジェクトで RAG を試験的に導入します。小規模から始めることで、リスクを抑えつつ RAG の効果を検証できます。たとえば、FAQ の自動応答システムや特定部門のナレッジ検索などが適しています。この段階で得られた知見は、次のステップへの基盤となり、本格的な導入に向けた準備を整えることができます。

データの前処理とチャンク化
RAG の効果を最大化するには、データの前処理とチャンク化が不可欠です。適切なデータ処理により、システムの応答精度と処理効率が大幅に向上するからです。利用するモデルの性能や適用するテキストの構成によって、ベストなチャンクサイズは変わるため、チューニングが重要です。たとえば、LLaMA 2 13B を用いた Bernardi ら (2024) の実験では、チャンクサイズ 128 トークン※3 、重複 10 トークンが最適という結果が出ています。適切なデータ処理により、RAG システムの応答精度と効率が向上します。

※1 前処理:HTMLタグ、余分なスペース、不要な記号などの雑音を取り除く作業 ※2 チャンク化:テキストを適切な大きさの単位に分割する作業 ※3 トークン:AI が処理する際の意味のある最小単位。

データの集中管理とクラウドストレージの活用
RAG を効果的に運用するには、データの一元管理が重要です。クラウドサービスを活用すれば、大量のデータを安全に保存し、素早くアクセスできるようになります。Google Cloud Storage 、Amazon S3 、Microsoft Azure Blob Storage などのサービスは、AI 機能との相性も良く、効率的に RAG システムを構築できます。これにより、RAG システムがより効率的に働き、必要に応じて簡単に拡張できるようになるのです。

STEP2:特定部門での限定的活用

STEP2 では、特定部門で RAG を限定的に活用し、実践的な効果を検証します。このステップでは、以下の 3 つの重要な要素に焦点を当てます。

  • 特定部門での限定的活用
  • クラウドストレージによるデータアクセスの改善
  • データの精度と更新頻度の管理

これらに取り組むことで、部門単位での成功事例を積み重ね、全社的な展開への準備を整えられます。結果として、RAG システムの信頼性が高まります。各要素について詳しく見ていきましょう。

特定部門での限定的活用
RAG システムを特定の部門やチームに導入し、業務効率を向上させます。検索技術を駆使して、より関連性の高い情報を素早く提供できるようになります。たとえば、営業部門での商品情報検索に RAG を活用すれば、提案資料の作成時間を大幅に短縮できます。まずはキーワード検索から始め、徐々に高度な検索手法※ を取り入れることで、関連文書の検索精度が向上します。このようにして、部門全体の業務効率が改善され、より質の高い成果を生み出せるようになります。

※ 検索には下記の 3 つの手法があります。

※1 TF-IDF : 単語の頻度と重要度を数値化 ※2 BM25 : 文書の長さも考慮した改良版

クラウドストレージによるデータアクセスの改善
クラウドストレージを活用すると、RAG システムのデータアクセスが格段に良くなります。部門のデータを一箇所に集めることで、情報の共有や更新が簡単になるからです。たとえば、研究開発チームがクラウドで最新の技術文書や特許情報を共有すれば、RAG システムは常に最新の技術動向を反映した分析ができます。これにより、仕事がスムーズになり、チーム全体の効率がアップします。

データの精度と更新頻度の管理
データの精度と更新頻度を適切に管理することで、RAG システムの信頼性を高めます。古いデータや不正確な情報は誤った回答を生み出す原因となるからです。定期的なデータ監査や自動更新プロセスを導入し、データの鮮度を保ちます。重要度に応じて更新頻度を設定し、リアルタイムデータと定期更新データを適切に管理することで、より効果的な RAG システムの運用が可能になります。これにより、ユーザーに常に最新かつ正確な情報を提供できるようになり、システムへの信頼が深まります。

STEP3:複数部門への展開と検索技術の高度化

STEP3 ではRAG の活用範囲を複数部門に拡大し、高度な検索技術を導入します。このステップでは、以下の 3 つの重要な要素に焦点を当てます。

  • 複数部門への展開
  • 高度な検索技術の導入
  • ハイブリッド検索の構築

これらに取り組むことで、組織全体の情報活用能力を向上させ、業務効率と意思決定の質を高められます。各要素について詳しく見ていきましょう。

複数部門への展開
RAG の活用を複数部門やプロセスに拡大し、組織全体の効率化を図ります。部門を超えた知識の共有と活用が促進され、組織全体のイノベーション能力が高まります。たとえば、マーケティング部門や人事部門といったさまざまな部門で RAG を導入し、情報検索や資料作成を効率化します。これにより、業務プロセスの効率化と迅速な意思決定が可能になり、組織全体の生産性と競争力が向上します。

高度な検索技術の導入
RAGシステムの性能を上げるには、賢い検索技術が欠かせません。単なる言葉探しではなく、文章の意味を理解する検索が大切です。ベクトルデータベースを使うことで、類似の意味の文章を素早く見つけられます。これにより、ユーザーの意図を正確に捉えた検索結果が得られ、仕事の効率と判断の質が大幅に向上します。

ハイブリッド検索の構築
さらに検索の精度を上げるために、ハイブリッド検索を導入します。これは、単語を探す方法と文章の意味を理解する方法を組み合わせた技術です。どちらか一方だけでは見つからない情報も、この方法で見つかりやすくなります。実際、 Finardi ら (2024) の実験では、検索の精度が 35% 以上も向上し、Amazon の研究では、新しい分野の情報でも 5 %多く関連情報を見つけられるようになっています。つまり、より正確で幅広い情報が手に入るということになります。ハイブリッド検索で、情報活用の質が高まるのです。

STEP4:全社的な活用戦略の策定

RAG を組織全体で活用するための戦略策定は重要です。このステップでは、以下の 4 つの重要な要素に焦点を当てます。

  • 全社的なRAG活用戦略の策定
  • プロンプト設計の最適化
  • クラウドストレージを活用したデータインフラの構築
  • 適切なモデル選定と統合方法

これらにより、RAG の効果を最大化し、組織の情報活用能力を高められます。各要素について詳しく見ていきましょう。

全社的なRAG活用戦略の策定
RAG を会社全体で使いこなすには、しっかりとした計画が必要です。RAG の力を最大限に引き出し、会社の情報活用能力を大きく伸ばせるからです。RAG に詳しい専門チームを作り、全社的なプロジェクトを進めれば、各部署に合わせた RAG の使い方ができます。こうして、データを基に素早く的確な判断ができるようになり、会社全体の生産性と競争力がぐっと高まります。

プロンプト設計の最適化
プロンプト設計を最適化し、LLM(大規模言語モデル)からの応答精度を向上させます。シンプルでターゲットを絞ったキーワードを用いたプロンプトが有効です。また、ReAct  プロンプト※1 の使用により、応答の正確さが 7% 向上し、ハルシネーション(誤情報の生成)が 13.5% 減少したという Veturiら (2024) の報告もあります。これにより、RAG システムの信頼性と有用性が大幅に向上し、より正確で関連性の高い情報を提供できるようになります。

※1 ReAct(Reason+Act の略):行動(たとえば検索)とその理由を組み合わせた形でプロンプトを構築すること

クラウドストレージを活用したデータインフラの構築
会社全体でデータを有効活用するには、クラウドストレージを使ったデータ基盤づくりが大切です。これは、各部署のデータを簡単に集めて整理できるようにし、RAG システムが使う情報の質を高めるためです。Google Cloud Storage や Amazon S3 などを使えば、部署を超えてデータを共有し、常に最新の情報を反映できます。その結果、会社全体の判断力が向上し、より素早く正確な経営判断ができるようになります。

適切なモデル選定と統合方法
会社の業務に最適な大規模言語モデル(LLM)を選ぶことが大切です。これは、会社の特徴や課題に合わせた AI 機能を実現するためです。OpenAI の GPT 、Google のGemini 、Anthropic の Claude など、特性や日本語対応力を考えて選びます。適切な LLM を導入すれば、高度な言語処理能力が手に入り、仕事の効率と判断の質が向上します。

STEP5:継続的な最適化と管理

RAG システムの継続的な最適化と適切な管理が求められます。このステップでは、以下の 3 つの重要な要素に焦点を当てます。

  • 継続的な最適化と新技術の導入
  • ガバナンスとリスク管理の強化
  • 運用コストの最適化と ROI の向上

これらにより、持続可能な運用を実現し、長期的な競争力維持と成長を達成できます。各要素について詳しく見ていきましょう。

継続的な最適化と新技術の導入
RAG システムを常に最新の状態に保つことが大切です。これは、システムの性能を最高レベルに維持し、変化する要求に応えるためです。たとえば、新しい言語モデルを導入したり、検索の仕組みを改良したりします。こうした取り組みにより、会社の革新力と適応力が高まり、競争力を維持できます。

ガバナンスとリスク管理の強化
RAG システムでは、データの安全性とプライバシーの保護が欠かせません。これは、会社の信頼を守り、法律のトラブルを避けるためです。その一環として、厳格なアクセス制御とデータ暗号化の実施、監査ログ管理などを行います。こうした取り組みにより、信頼性が高まり、組織が安心してシステムを使えるようになります。

運用コストの最適化と ROI の向上
RAG システムの運用コストを抑えつつ、投資効果を最大化することが重要です。これは、システムを長く効果的に使い続けるためです。たとえば、無料のオープンソースツールを活用したり、最適な AI モデルを選んだりします。データの処理方法を工夫すれば、高額な再学習も不要になります。こうした取り組みで、コストを抑えながらシステムの価値を高められます。

先行事例:RAG 導入による業務効率化

RAG の導入により、実際にどのような効果が得られるのか、具体的な事例を通じて紹介します。LINEヤフーの「SeekAI」やクレディゾンの「アシストくん」など、先進的な取り組みから、RAG がもたらす業務効率化の可能性を探ります。

①事例 1:LINE ヤフーの SeekAI – 全社的知識共有と業務効率化の実現

LINEヤフーは、RAG を活用した社内向け AI チャットボット「SeekAI」を導入し、業務効率化を実現しています。このシステムは、社内の様々な部門の文書を統合し、最適化された回答を提供することで、確認・問い合わせ時間を大幅に削減しています。全従業員への導入により、組織全体の知識共有が促進されており、年間 70~80 万時間の業務時間削減という目標を現実的なものにしています。 特筆すべきは、「LLM-as-a-Judge」という手法を用いた自動評価システムの構築です。これにより、RAG の回答品質を継続的に監視し、改善できています。 このように、企業は RAG により業務効率化と知識共有の促進を同時に実現できます。

➁事例 2:クレディセゾンの挑戦:人間と AI の協調で実現する高精度な社内チャットボット

クレディセゾンの社内チャットボット「アシストくん」は、AI と人間の協働による革新的なソリューションです。社内 FAQ と各部署のデータを基盤とし、検索エンジンと LLM を連携させて高精度な回答を生成します。 このシステムの特徴は、人間によるチェックと修正プロセスを組み込んでいる点です。「締め日直前の勤怠の付け方」といった具体的な業務質問に対応し、「担当者へお繋ぎします」という表示で従業員の安心感を醸成します。回答候補が不適切であれば人間が手動で回答し、その内容は FAQ に登録されて、次から自動的に回答されます。 この仕組みにより、業務効率の向上と従業員満足度の改善を同時に実現しています。

➂事例 3:デロイトトーマツの RAG 活用 – コンサルティングの品質向上

デロイトトーマツコンサルティングは、RAG を活用した社内向け対話型 AI システムを導入し、業務効率化と情報の正確性向上を実現しています。このシステムにより、コンサルタントはドキュメントの要約や内容に関する質問が可能になりました。RAG の導入で、社内固有の情報を活用した正確な回答生成や、ハルシネーションの軽減が実現しています。 特筆すべきは、AI の回答に根拠を示す機能の実装です。これにより、情報の検証が容易になりました。藤岡稔大執行役員は「コンサルタントは顧客企業の変革推進などの知的業務に集中する」と述べています。 RAG が高付加価値業務への注力を可能にしている一例と言えるでしょう。

Lightblue Assistantの紹介

Lightblue Assistant は、企業の業務効率化を実現する先進的な AI アシスタントサービスです。ChatGPT やClaudeといったLLMの機能を拡張し、企業独自のデータを活用できる点が最大の特徴です。 新機能「マイアシスタント」により、特定業務に特化した AI チャットサービスを容易に構築できます。また、Box 連携機能の追加や多様なファイル形式のアップロードにより、独自データの活用範囲が大幅に拡大しました。 Slack や Teams との連携で従業員の利用障壁を低減し、セキュリティも確保します。さらに、AI 専門家による継続的なサポートにより、システムの精度向上が期待できます。 Lightblue Assistant の導入により、企業は生成 AI の潜在能力を最大限に引き出し、業務プロセスの革新と意思決定の質の向上を実現できるでしょう。

サービスサイト:https://www.lightblue-tech.com/lightblue-assistant/

まとめ

RAG の効果的な導入には、データの整備、効率的な検索システムの構築、LLM との統合が不可欠です。弊社調査では、生成 AI ツールだけでは全業務の 34% しか対応できず、RAG を用いた独自データベースの活用が 41% の業務に必要であることが明らかになりました。 LINE ヤフーの SeekAI やデロイトトーマツの事例が示すように、RAG の導入は業務効率化と知識共有の促進に大きく貢献します。特に、現場レベルでのデータ管理や日常的な業務改善が、RAG Ready への重要なステップとなります。 企業は自社の現状を客観的に評価し、段階的なアプローチで RAG 導入を進めることが重要です。データの品質管理、適切な更新頻度の設定、コスト最適化など、多角的な視点からの取り組みが求められます。 RAG Ready の実現により、企業は情報活用の効率を飛躍的に高め、競争力を強化することができます。この取り組みは、未来に向けたデータ駆動型経営の基盤となるでしょう。

おわりに

RAG Ready への道は、企業の競争力強化と持続的な成長につながる重要な投資です。小規模なプロジェクトから始め、段階的に拡大していくアプローチが効果的です。 Lightblue Assistant のような先進的なツールを活用することで、企業は独自データを生かした AI アシスタントを容易に構築できます。この AI アシスタントは、社内 FAQ システムの構築や専門性の高い業務支援を可能にし、従業員の生産性向上に大きく貢献します。 未来に向けたデータ第一主義の体制を築くことで、企業は変化の激しいビジネス環境に迅速に適応し、新たな価値創造の機会を見出すことができます。Lightblue は、皆様の RAG Ready への取り組みを全面的にサポートし、企業の持続的な成長を支援いたします。

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本ウェビナーでは、AINOW編集長のおざけん氏とともに「RAG Ready」に向けたロードマップを紹介しながら、現場で活用できる「RAG Ready」への具体的な準備手順とチェックポイントを解説しています。ぜひ御覧くださいませ。

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